油は悪なのか、脂質の基礎知識編

「脂はダイエットや健康に悪い」というイメージ、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし実際には、私たちの体にとって脂質は欠かせない大切なエネルギー源であり、細胞膜やホルモン生成にも関わる重要な栄養素です。
では、なぜ 悪いイメージが先行するのか?
それは、すべての脂質が同じわけではないから。
今回の記事では、脂質の基礎を改めて整理しながら、過剰摂取の悪影響やおすすめの摂り方・控え方について科学的なエビデンスとともに解説します。
「脂肪=敵」ではなく、「賢く選ぶべきもの」と理解していただくことで、健康と美味しい食生活の両立を目指しましょう。
脂質の基礎:良い脂・悪い脂とは?
脂質は何のために必要か
- エネルギー源
- タンパク質や炭水化物と並ぶ三大栄養素。1gあたり9kcalと高いエネルギー効率
- 細胞膜・ホルモンの材料
- 体の細胞を包む膜、性ホルモンなどの原料にもなる
- 脂溶性ビタミンの吸収を助ける
- ビタミンA, D, E, Kなどは脂に溶けて初めて体に吸収される
つまり脂質は体を動かす燃料であり、人体構造やホルモン生成にも欠かせません。
だから完全にカットすることは身体活動を維持するためには不可能です。
種類による違い
脂質は大きく分けて「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」に分類され、性質や体への影響が異なります。
- 飽和脂肪酸(SFA)
- バターやラード、牛・豚などの動物性脂、ココナッツオイルなどに多い
- 過剰摂取するとLDLコレステロールが上がり、心血管リスクを高める
- 摂りすぎはNGだが、必要な量をきちんと守ればエネルギー源となる
- 一価不飽和脂肪酸(MUFA)
- オリーブオイルやアボカド、ナッツ類などに多い
- LDL(悪玉)コレステロール低下や心臓病リスク低減に有益とされる
- 毎日の調理油をこれらに置き換えることで健康効果が期待
- 多価不飽和脂肪酸(PUFA)
- オメガ3系:青魚(EPA・DHA)、えごま油、亜麻仁油など
- オメガ6系:コーン油、大豆油、ゴマ油など
- 心血管疾患を予防し、炎症を抑える働き
- 特に青魚のEPA・DHAは脳機能向上や血栓予防にも寄与
- トランス脂肪酸
- マーガリン、ショートニング、ファストフード・菓子類などに多い
- 人工的に水素添加された油が典型的で、コレステロールバランスを崩し心臓病リスクを上げる
- WHOや先進諸国は摂取を極力ゼロに近づける方向性
摂りすぎの悪影響:なぜ問題?
生活習慣病と血管リスク
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を過剰に摂取すると、LDLコレステロール(悪玉)が増え、動脈硬化が進行しやすくなります。結果として、
- 心筋梗塞・脳卒中のリスクの上昇
- 高血圧や脂質異常症の悪化
- 肥満からくるメタボリックシンドロームなどが進行する
肥満や糖尿病への影響
脂質は1gで9kcalと高カロリー。
特に揚げ物やファストフード、菓子類に含まれる隠れ脂を多く摂りすぎると、あっという間にカロリー超過となります。
結果として体脂肪が増え、
- 肥満が急進
- インスリン抵抗性を悪化させ2型糖尿病の発症リスクが高まる
- 油っこい食に慣れると野菜や魚を食べる機会が減り、栄養バランスも偏る
炎症反応の促進
高脂肪食が慢性的に続くと、体内で炎症を抑える物質と促進する物質のバランスが崩れ、慢性炎症が進むとの研究もあります。
これが動脈硬化の加速や各種慢性疾患を誘引する可能性が指摘されています。
摂取基準と現実:どれくらいが適量?
日本人の食事摂取基準(厚労省)
- 総エネルギーの 20~30% を脂質から摂るのが望ましいとされる
- 例えば1日2,000kcalであれば400~600kcal分が脂質 → 44~66gの脂質
- 飽和脂肪酸は総エネルギーの7%以下
- 2,000kcalの人なら約15g以内
トランス脂肪酸はできるだけ少なく
- WHOは1日総エネルギーの1%未満としており、極力ゼロに近いほど良い
- 市販の油や菓子にはトランス脂肪が含まれる場合があるため、成分表示を確認しよう
日本人の現状
日本は欧米より飽和脂肪酸の摂取量は少ない傾向ですが、近年の洋食化や外食産業の発展により、ファストフードや菓子類などで過剰摂取が増えつつあります。
特に若い世代は脂質比率が30~40%に及ぶケースも。
良い脂肪源・悪い脂肪源の例
積極的に摂りたい「良い脂」
- 魚(青魚:サバ・イワシ・サンマなど)
- オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が豊富。週2回程度食べると良い
- オリーブオイル・アボカド・ナッツ
- 一価不飽和脂肪酸が豊富。心臓病リスク低減に有益
- えごま油・亜麻仁油(生食用)
- オメガ3系。サラダドレッシングなどで活用
- ごま油、大豆油
- 多価不飽和脂肪酸(オメガ6系)。適量ならOK
控えたい脂肪源
- トランス脂肪酸を含むマーガリン、ショートニング
- 市販の菓子やパンに使用されている場合が多い
- バターやラード、牛や豚の脂身、加工肉(ベーコン・ソーセージ)
- 飽和脂肪酸が多く、 LDL コレステロール上昇
- ファストフード(ピザ、ハンバーガー、フライドポテト等)
- 揚げ油やチーズによる飽和脂肪酸・トランス脂肪酸
- 菓子類、ドーナツ、クッキー、ケーキ
- バターや生クリーム、ショートニング使用。糖質も多くカロリー爆弾
具体的アクションプラン
調理油の見直し
- オリーブオイル・菜種油(エクストラバージンや圧搾製法)に切り替える
- 飽和脂肪酸が少なく、一価不飽和が多い
- 揚げ物より焼き・蒸し・煮る
- 調理で使う油の量を大幅カットできる
魚やナッツを習慣に
- 週2回以上の青魚
- サバ、サンマ、イワシ、鮭などを意識して食事に取り入れる
- おやつをナッツに置き換える
- アーモンドやクルミに含まれる良質脂肪・ビタミンE
- サラダにオメガ3オイル
- えごま油や亜麻仁油をドレッシングで活用(加熱しないのがポイント)
高脂質の肉や加工食品を控える
- 肉は脂身の少ない部位を選ぶ
- ヒレ、鶏むね、鶏ささみなどを使い、調理で余分な脂を落とす
- ベーコンやソーセージなどの加工肉を毎日食べない
- たまの楽しみに留め、野菜と一緒に摂る
- ピザやフライドチキン、ポテト
- イベントや外食の時だけに抑え、日常的に頼らない
市販菓子の頻度を減らす
- トランス脂肪酸が含まれる製品をチェック
- 成分表示で「部分水素添加油脂」「ショートニング」など
- 洋菓子を買う回数を減らし、フルーツやヨーグルトに置き換え
- 甘いものが欲しいなら和菓子や手作りのおやつに
まとめ:脂質は悪ではなく賢く選ぶもの
⭐️ 脂質=大事な栄養素。細胞膜やホルモンの材料。全く抜くのは健康を害する
⭐️ 飽和&トランス脂肪の過剰摂取は心臓病、肥満、糖尿病など生活習慣病に直結
⭐️ オリーブオイル、青魚のEPA・DHA、ナッツの不飽和脂肪酸などの良質な油を適量取る
⭐️ 調理法、食材選び、おやつの選択を少し変えるだけでも効果大
料理を楽しみながら、油の質と量をちょっと意識するだけで、健康リスクをぐっと下げられます。
美味しいものを我慢しすぎる必要はありませんが、日常的に「悪い脂」がたっぷり含まれた食品ばかり選ぶことは、将来の健康を損なうかもしれない。
ぜひこの機会に、あなたのキッチンと日々の食卓を振り返ってみませんか?
それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!