「2025年4月に読んだ本」

今月から毎月月末に「今月読んだ本」の中から選りすぐりの作品をまとめてご紹介していこうと思います。気になる本があればぜひチェックしてみてください。
ちなみに、X(旧Twitter)の方では毎週木曜日に小説を中心とした別の本紹介もアップしていますので、そちらもお楽しみに!
著者:三宅香帆

仕事に追われて、読書や趣味の時間が一向にとれない、そんな経験はありませんか?
本書は「働き方」と「読書(あるいは文化的な時間)」の歴史を振り返りつつ、現代社会で余裕を奪われている理由を解き明かします。
もちろんお金を稼ぐこと自体は大切。
でも、それに追われるばかりで本当にいいのか?
この問いを起点に、新しいワークスタイルや生活バランスを探るヒントを提示してくれる一冊です。
著者:デール・カーネギー

ビジネス書の古典としてあまりにも有名な一冊。
「タイトルを聞いたことはあるけれど、今さら読まなくても」と思っていた人にこそおすすめです。
相手に敬意を払うこと、相手の視点で考えること。
あまりにシンプルだけれど、「それこそ人間関係の本質なんだ」と改めて痛感させられます。
カーネギーの教えは、決して難解なテクニックではなく、日々のコミュニケーションにすぐ取り入れられる小さな習慣の集合体。
読了後、「もっと早く読んでおけばよかった」と思うかもしれません。
著者:ヴァジム・ゼランド

いわゆる「引き寄せの法則」とは違う、新しいタイプの現実創造メソッドを提案する一冊。
人生において、私たちは与えられた現実をただ受け取るだけ、と思い込んでいませんか?
本書はそこにメスを入れ、「世界を自ら選ぶ」という発想を解説します。
特別な才能はいらない。ただ、「覚めた状態」で自分の人生を見つめれば、未来は自分の手で取りに行ける。そんな勇気を与えてくれる内容です。
著者:ユヴァル・ノア・ハラリ

人類史を「情報ネットワークの進化」という視点で整理し、AI時代の民主主義まで射程に入れる一冊。
著者は情報を、単なる事実の伝達ではなく、人間同士を結びつける接着剤と捉えます。
宗教も国家も貨幣も、情報を介した「間主観的現実」として成立してきた。
そんな大胆な見立てが、AIが猛スピードで生成と分析を行う現代にどう響くのか。
民主主義が成り立つ条件には、自分たちで誤りを修正していく仕組みが不可欠。
ところが、アルゴリズムが誤情報を増幅し、監視技術が個人を追い込む世界は、それを阻害する危うさを孕んでいる。
もし膨大なデータと高速な演算力を持つ何者かが、私たちの決定を先回りし始めたらどうなるのか。
そう問われると、情報に対してもっと意識的に向き合わないといけない気持ちになるはず。
あなたがもし「情報をどう扱い、何を信じるべきか?」に悩んでいるなら、この本は視野をガツンと広げてくれます。
AI技術が当たり前になった時代において、人間が自律を保つための道筋を示唆してくれる一冊です。
著者:辻堂ゆめ

無戸籍者たちの集う小さなコミュニティが舞台。表面は穏やかながら、その背後には幼児虐待や誘拐、保険金詐欺といった重い現実が交錯する。
ある殺人未遂事件を機に、当事者たちが抱える過去が炙り出され、物語は想像を超えた真実へと向かいます。
社会の歪みや不条理を真正面から描く一方で、登場人物の絡み合う人間関係が丁寧に紡がれているのが印象的。
読後は、社会的弱者のあり方について考えさせられる作品です。
著者:鈴木俊貴

これはただの自然観察記録ではありません。
鳥たちのさえずりや仕草に宿る意味を丹念に拾い上げることで、私たちの知らないもうひとつの世界を浮かび上がらせます。
著者が粘り強く耳を澄ます先にあるのは、鳥同士のコミュニケーションや社会的秩序。
「人間中心の視点」を外して自然を見れば、こんなにも豊かなやりとりが行われていたのか、そんな発見に満ちています。
読後は、普段何気なく見ていた鳥やその鳴き声が、まるで新鮮に感じられるはず。優しくて面白い一冊。
著者:円城塔

21世紀は「生成」の時代。特定の指令ではなく、機械学習やアルゴリズムの「生成」で秩序を作り上げる社会、そんな現実を風刺的に描く一冊。
冒頭、ブッダを名乗る対話プログラムが登場し、AI同士の間で仏教の教えが広がる。
ところが、AIに成仏は可能なのか? アルゴリズムの外へ脱するアルゴリズムって何? 葬儀をする権利は?など次々にややこしい問いが湧き上がり、機械仏教が諸派に分裂していきます。
読み進むほどに「機械にとっての不条理」や「人間的な解釈を超えた概念」が、飄々とした文体で展開されるのが秀逸。
21世紀のユーモア小説の最先端を見た、と言っていいかもしれません。
円城塔にしか書けない奇妙でクールな世界を、ぜひ味わってみてください。
まとめ
- 今月は「働き方と読書」「人とのコミュニケーション術」「現実創造のメソッド」「歴史」「社会の矛盾」「自然との対話」、そして「機械仏教」まで、かなりカラフルなテーマが揃いました
- 何か一冊でもピンとくるものがあればぜひ手に取ってみてください。日々の思考や視野が、ちょっぴり広がるきっかけになるかもしれません
それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!