育児

可愛い子には歩かせよ

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最近、ショッピングモールや駅で、キャリーカートやベビーカーに乗せられた子どもたちをよく見かけます。

2~3歳の子が乗ったままスマホを触っている光景も珍しくなくなりました。確かに、子どもを歩かせるのは大変です。

買い物のペースは乱されるし、途中で「疲れた」と泣かれることもしばしば。

でも、その楽を優先することが、実は子育てを長期的に難しくしているかもしれません。

今回の記事では、「歩く」ことが子どもの心と体にどれほど大きな影響を与えるのかを、科学的根拠をもとに詳しく解説していきます。

座りっぱなしの弊害

世界の健康ガイドラインでは、「5歳未満の子どもを睡眠時以外に長時間じっとさせないこと」が強調されています。

特に、テレビやベビーカーでの移動のように、身体が固定された状態で過ごす時間が長いと、発育に悪影響が出るとされています。

たとえば、乳児期には長時間ベビーシートに座ることで頭の形が変形したり、片側の筋肉だけが発達することでバランスが崩れることもあります。

幼児期にベビーカーでの長時間移動が習慣化すると、特定の筋肉ばかりが使われることで他の筋肉が十分に育たず、関節の可動域が制限されてしまう可能性があります。

抱っこの場合も、常に同じ向きで抱くことで体の左右のバランスに偏りが出ることがあります。

さらに、こうした「動かない」状態が当たり前になると、子どもが自発的に動き出す機会も減ってしまい、成長の節目となる発達課題に影響が及ぶことが懸念されています。

動かないことが学びを奪う

子どもは動くことで世界を学びます。

寝返り、はいはい、歩く、転ぶ、起き上がる。

そのすべてが因果関係や空間認知、自分の体の使い方を学ぶプロセスです。

しかし、長時間座ったままでは、こうした体験が失われます。

アメリカ小児科学会は、乳幼児の平均的な拘束時間が1日6時間にも及ぶと報告しており、「必要な車移動+1時間程度」に制限すべきだと提言しています。

この「動かない時間」の影響は、単に身体的な発達だけではなく、認知や情緒、言語の発達にも波及します。

たとえば、自分の足で歩いて探索する中で、子どもはさまざまなものを発見し、大人に質問したり名前を覚えたりして言語が育ちます。

歩くことで得られる経験は、五感すべてを使った「生きた学び」の宝庫なのです。

歩くことが育む、身体と心の基礎体力

WHOや文部科学省のガイドラインでは、幼児に1日3時間程度(そのうち1時間は中強度以上)の身体活動を推奨しています。

つまり「歩くこと」は、日々の運動量を確保する最も手軽で効果的な手段のひとつです。

歩くことによって、全身の筋力や心肺機能が育ち、姿勢やバランス感覚も整ってきます。

さらに重要なのは、歩くことで得られる「自己効力感」です。

子どもが「自分で歩けた」「ゴールまでたどり着けた」と感じる経験の積み重ねは、「やればできる」という内なる自信を育てる大きな種になります。

また、歩く過程で起こる「疲れた」「でも頑張った」という感情のゆらぎは、自己調整能力の育成にもつながります。

これは学齢期以降の学習意欲や困難に立ち向かう力の土台となる、大切な力です。

実践ポイント:子どもを歩かせるための工夫

ベビーカー・抱っこの使い方を見直す

短時間の徒歩移動では、あえてベビーカーを使わずに歩かせる選択を取りましょう。

どうしても使う場合も、途中で降ろして歩かせる、ベンチで遊ばせる、抱っこから一度下ろして足を伸ばすなどの工夫を取り入れることで、身体を動かすチャンスを増やせます。

安全と自由を両立する環境をつくる

保育や家庭での外遊びでは、安全を守りながらも子どもが自由に探索できるよう配慮を。

公園では「ここなら手を放しても大丈夫」と思える範囲を確保し、思いきり走らせたり、遊具で遊ばせたりして、運動量を自然に確保できる場を作ってあげましょう。

歩くことを遊びにする

移動をゲーム化すれば、子どもは遊び感覚で楽しく歩けます。

「信号までダッシュ!」「落ち葉を何枚拾えるか競争しよう」といった声かけが効果的です。

これにより、歩くことそのものがポジティブな体験として記憶されていきます。

会話を通して学びを広げる

歩いている時間は、親子の対話を深める絶好のチャンスです。

周囲の景色や音、動植物に気づいたら、「あれは何だろうね?」「触ってみたいね」と語りかけましょう。

このような日常の語りかけが語彙を増やし、子どもの好奇心や観察力を育てます。

まとめ:歩くことは、生きる力を育てること

子どもにとって「歩くこと」は、単なる移動手段ではありません。

それは、自分の身体と感覚をフルに使って世界を知り、他者と関わり、自分に自信を持つための「生きる力」を育てる行為です。

もちろん、忙しい日々の中で「全部を歩かせる」ことは現実的ではないかもしれません。

だからこそ、意識して5分でも10分でも、「歩かせる選択」を取り入れてみてください。

例えば、コンビニまでの道を一緒に歩く、公園までの移動をゲームにしてみる。

それだけでも十分なスタートです。

そして、歩いているときには手をつないで、その小さな手の温もりを感じながら、一緒に風を感じ、空を見上げ、会話を楽しむ。

そんな日常こそが、子どもにとって最も豊かな学びの時間になるはずです。

それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!

PROFILE
のりたま
のりたま
僧侶兼主夫として働く、三人娘の父親ブロガー
健康的で、SDGsな子育てや、人生の質を向上させる有益な情報を発信します。
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