教養

人は嘘の情報に踊らされる

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人は、データやテレビの情報より、GoogleやSNSで自分で検索した情報の方を信じやすい。

これは一見「情報リテラシーが高まった証」と思われがちですが、実際には多くの課題を含んでいます。

今回の記事では、「なぜ人は自分で探した情報を信じやすいのか」という心理的背景から、「確証バイアス」や「フィルターバブル」のメカニズム、そして誤情報から自分を守るための具体的な対策まで、網羅的に解説していきます。

なぜ人は「自分で探した情報」を信じてしまうのか

私たちは、新聞やテレビなどの伝統的メディアから一方的に与えられる情報よりも、自分で検索して得た情報の方により信頼感を抱きがちです。

これは、「自分で調べた」という行為そのものが、情報への主体的な関与を生み、自分で選んだというコントロール感と達成感をセットで与えてくれるからです。

実際、イェール大学の研究では、インターネット検索を行った人は「自分はよく知っている」と過信する傾向が強く、たとえその検索で有効な情報を得られなかった場合でさえ、「物知りになった」と錯覚するケースがあると報告されています。

この「探して扱った分、情報が身近に感じられる」という感覚は、脳に成功体験に近い影響を与えます。

だからこそ、自分で見つけた情報にはつい真実味を感じてしまうのです。

確証バイアスと「自分に都合のいい部屋を探させるアルゴリズム」

さらに問題を深くするのが、「フィルターバブル」と呼ばれる現象です。

SNSや検索エンジンは、私たちの過去の閲覧履歴やクリック傾向に基づいて「あなたに合った情報」を優先的に表示します。

これは便利なようでいて、実は「自分に都合の良い情報」しか目に入らなくなるという落とし穴でもあります。

この結果、自分が信じたい方向に合致する情報ばかりを目にするようになり、反対意見や異なる視点が見えなくなる。

まさに「情報の偏食状態」に陥ってしまうのです。

こうして、「自分で探した情報は信頼できる」という感覚自体が、実はアルゴリズムによって与えられたものであり、「真実」ではなく「好みに合わせた答え」に過ぎない可能性があるのです。

思考のバイアスを見直す

では、こうした偏った情報環境から自分をどう守ればよいのでしょうか?

まず必要なのは、自分の思考の側から問い直す姿勢です。

  • 「その逆は真ではないのか?」と、あえて反証の視点を持つこと
  • 「これを否定する証拠はないか?」と、自分の考えに穴がないかチェックすること

これは「自分が信じたいこと」にこそ疑いの目を向けるという、知的に成熟した姿勢です。

信じたい情報にこそ、議論と反証を吸収する

一見、自分の考えと合致する情報は安心感をもたらします。しかし、そこにこそ盲点が生まれやすい。

  • 自分の仮説と正反対の立場から見てみる
  • 反対意見を検索して、その中で「納得できるもの」がないか探ってみる
  • もしそれでも自分の考えが揺るがないなら、その情報にはより深い信頼性が備わっていると言える

これは、「反対意見との対話」を通じて、自分の思考の筋力を鍛える作業です。

具体的なアクションプラン

ラテラル・リーディングを実践する

「ラテラル・リーディング(横読み)」とは、ひとつの情報源に依存せず、同時に複数のソースを比較検証する情報リテラシー技術です。

  • ある記事を読んだら、別のメディアではどう報じられているか調べる
  • その情報源の信頼性や背景を別タブで並行してチェックする
  • 信頼できるファクトチェックサイトの活用も効果的

この習慣を持つことで、フェイクニュースやミスリードのリスクをぐっと下げることができます。

フィルターバブルを破る習慣を持つ

アルゴリズムによって作られた情報の部屋から抜け出すには、意識的な行動が必要です。

  • 普段読まないニュースサイトやジャンルの記事にも目を通す
  • SNSでは、あえて反対意見の人を数名フォローしておく
  • 「これは本当に信じていいのか?」と疑問を持てる情報筋力を鍛える

情報収集とは、「偏りなく触れる習慣」を持つことと表裏一体です。

加えて、検索エンジンや動画サイトに蓄積される「閲覧履歴」も、バイアスの温床になります。

  • YouTubeでは、履歴の保存をオフに設定することで、自動的にアルゴリズムが自分好みに寄っていくのを防げます
    • 手順:YouTubeアプリやブラウザで「設定」>「履歴とプライバシー」>「検索履歴の保存をオフ」「再生履歴の保存をオフ」
  • Googleのアクティビティ管理から「ウェブとアプリのアクティビティ」をオフにすれば、検索履歴のパーソナライズ影響を軽減できます

こうした「履歴リセット」は、自分の情報環境を意図的に初期化し、フィルターバブルを壊す第一歩です。

教育や社会の仕組みでサポートする

個人だけでなく、社会全体の構造としても「情報免疫力」を高める必要があります。

  • フィンランドなどの北欧諸国では、学校教育の中にメディアリテラシー教育を組み込んでいる
  • 日本でも一部の学校では「SNSの情報の見分け方」「ニュースの読み解き方」などを学ぶ授業が実施されている
  • 企業やニュースメディアも、ワークショップや記事を通して「誤情報の批判的読解法」を教える試みが始まっている

教育の場や社会活動で、「見抜く力」や「疑う力」を育てていくことも重要な対策なのです。

まとめ:検索で得た情報に「根拠のない自信」を持たない

「自分で調べたから正しい」この感覚が思考を曇らせてしまうことがあります。

検索は便利な道具ですが、その利便性の裏には、

⭐️ 確証バイアス

⭐️ フィルターバブル

⭐️ 情報の過信

といった認知の落とし穴が隠れています。

大切なのは

⭐️ 自分の思考のバイアスを知ること

⭐️ 反対意見に耳を傾けること

⭐️ 複数の情報源を比較検証すること

そして何より、「自分だけは大丈夫」と思わないこと。

情報において、最も騙されやすいのは自分自身だという自覚こそが、本当の知性の第一歩なのです。

それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!

PROFILE
のりたま
のりたま
僧侶兼主夫として働く、三人娘の父親ブロガー
健康的で、SDGsな子育てや、人生の質を向上させる有益な情報を発信します。
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