【コラム】なぜ私たちは同じでありたがるのか

娘の幼稚園で、ある子が「みんなと同じ色の帽子がいい!」と涙を流していました。
周囲と少し違うというだけで不安になり、心細くなる。
けれどこれは、子どもに限った話ではありません。
私たち大人も、「他人と違うこと」に、どこかしら居心地の悪さや恐れを感じてしまう。
それはなぜなのでしょうか?
同質性への欲求の正体は「生存戦略」
その答えは、遥か昔の狩猟採集時代にあります。
人類は長らく、集団で暮らすことで生き延びてきました。
個人が群れから排除されることは、すなわち死を意味していたのです。
だからこそ私たちの脳には、「周囲と同じでいること=安全」「協調=生存」といった感覚が、DNAレベルで刷り込まれているのです。
現代でも、空気を読む、みんなと同じ意見を言う、流行に乗る。
こうした行動はすべて、社会的一体感を保ちたいという本能的な欲求のあらわれと言えるでしょう。
異質なものを排除するのもまた本能だった
ただし、同時にもう一つの本能が存在します。
それが「異なるものへの警戒心」、そして「排除の心理」です。
未知の病原体を持ち込む他部族、和を乱す裏切り者、不安定な行動をする仲間。
こうした異質な存在は、集団にとってのリスク要因でした。
だからこそ、人類は進化の過程で「異なるものを警戒し、排除する」能力を育ててきました。
これもまた、生き延びるための戦略だったのです。
現代に息づく排除のバイアス
この2つの力「同じでいたい」と「違うものを排除したい」は、時代が変わっても、私たちの心の奥にしっかりと残っています。
- SNSで炎上する少数意見
- 学校で「空気を読めない子」が仲間外れにされる
- 職場で変わった人が疎まれる
こうした現象の根底には、人間に備わった進化的バイアスがあるのです。
悪意ではなく、生き延びるために必要だった、過去の名残なのです。