育児

遊びながら学ぶ記憶の魔法

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「え?九州は何県あるって?……八県だよ」

そう答えたのは、まだ幼稚園の三女。

しかも都道府県を全部言えて、関東は一都六県という区分けまで分かっている。

特別な勉強なんてしていない。ただ、楽しく歌って覚えただけ。

今回は、そんな我が家の「ゴロゴロイメージ都道府県」の体験をもとに、遊びながら学ぶ力について、記号接地やアハ体験といった認知科学の視点からも掘り下げてみたいと思います。

音楽は記憶の杖になる

音楽やリズムが記憶を助ける力は、古代から語り継がれてきました。

人間は言葉よりもメロディを、理屈よりもリズムを先に覚える生き物です。

七田式の「ゴロゴロイメージ都道府県」は、各県を「音×イメージ」で結びつける記憶法。

たとえば「力持ちの青森」「可愛いリスの東京都」「熊とお散歩熊本」など、ユーモアと情景が混ざったゴロが満載で、聴いているうちに勝手に口ずさめるようになります。

神経科学の研究では、韻やリズムが脳の海馬や側頭葉の記憶ネットワークを活性化させ、情報をチャンク(まとまり)として整理しやすくすることが分かっています。

また、記号接地理論においても「音やイメージという感覚情報に接地された言葉」は記憶に強く残るとされます。

楽しく笑いながら学ぶという情動の結びつきは、記憶の固定化に大きく貢献します。

つまり、「楽しい」は脳にとって最強のラベルなのです。

理解よりも「印象」で覚える

大人は「意味が分からないと覚えられない」と考えがちですが、子どもは違います。

幼児期における記憶は、理解よりも印象が決め手です。

「楽しい!」「これ知ってる!」といったポジティブな感情が、記憶のトリガーとなります。

今井むつみ氏は、子どもが言葉を「意味ではなく経験に基づいて獲得する」ことを「記号接地の起点」と表現しています。

たとえば「さいたまはUFOのかたち」と聞いた三女は、意味はわかっていなくても「UFO」という視覚的な刺激と地名が結びつき、記号に実感がともなうようになります。

こうした「体験に接地した言葉」は、やがて地図や歴史など、より抽象的な学びの土台になっていくのです。

音楽×身体=最強の集中力強化コンビ

歌っているとき、子どもはじっとしていません。

体を揺らし、目を輝かせ、大声で叫びながら部屋を駆け回ります。

これは単なるはしゃぎではなく、全身を使った深い学習です。

チリの大学の研究では、音楽訓練を受けた子どもたちに前頭前野の活性化が見られ、ワーキングメモリや注意力の向上が確認されました。

今井氏が言う「記号接地」は、こうした身体感覚と認知の結びつきを強く重視しています。

たとえば、ジャンプしながら「ちば!さいたま!とちぎー!」と叫ぶ行為は、音・体・空間の三位一体で記憶を深く刻む即興の接地体験です。

このようにして、体の動きが言葉に意味を吹き込み、単なる暗記が「使える記憶」へと昇華していくのです。

遊び心が「学びたい!」を引き出す

音楽の最大の力は、楽しくて「もう一回やりたい」と思わせてくれるところにあります。

これは心理学でいうところの「エンゲージメントの向上」であり、記憶定着と学習意欲を大きく高める要因です。

今井氏が提唱する「記号接地待ち」という考え方では、意味がわからない言葉も、遊びの中で体験を通して後から「あっ!」と腑に落ちる=アハ体験が訪れることが大切だとされます。

このあと伸びの学習姿勢は、受け身の記憶ではなく、自発的な探究心を育ててくれます。

だからこそ、「なんとなく覚えた都道府県ソング」が、「あの場所って、どこにあるんだろう?」「東京のリスってどんなリス?」と、新たな学びへの扉を開いてくれるのです。

暗記は創造の第一歩

ゴロで覚えた「熊とお散歩熊本」でも、本当に熊はいるの?どんな街?

そんな疑問が芽生えた瞬間、子どもの頭の中で「記号」が「意味ある知識」に変わる準備が整います。

今井むつみ氏はこの過程を「記号接地の第二段階」と呼び、習得した言葉を足場にして概念を深めるプロセスが始まると指摘します。

絵本や地図、旅行体験や映像などと結びつくことで、丸暗記は意味のある知識へと変化します。

大切なのは「覚えること」そのものではなく、「覚えたことに意味を見出すこと」。

それを自然に促してくれるのが、「ゴロゴロイメージ」のような遊びに満ちた学びなのです。

まとめ:遊びは、学びの入り口になる

「学ぶって、こんなに楽しかったんだ」

そう思える瞬間を最初に届けられること。

それこそが、教育の本質なのかもしれません。

音楽・イメージ・身体性を通じて言葉に感覚の地面を持たせること。

つまり、記号接地がなされた知識は、感情や体験と強く結びつき、人生に根ざした使える知恵になります。

そして、「今は意味が分からなくても、いつかつながる」と信じて待てる学びの土壌には、いつでもアハ体験という実が実ります。

私たち親にできるのは、知識を教えることよりも、面白がること。

そして、「わからないねえ」と言える余白を守ってあげることです。

それは、未来の学びの種を蒔く、最もやさしい営みなのです。

それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!

PROFILE
のりたま
のりたま
僧侶兼主夫として働く、三人娘の父親ブロガー
健康的で、SDGsな子育てや、人生の質を向上させる有益な情報を発信します。
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