心の栄養足りてますか?

先日、妻が東京へ泊まりの出張に行き、私はワンオペで家を回すことになりました。
家事に育児に仕事にと走り回っていると、どうしても子どもと接する時間が限られてしまいます。
そこへ追い打ちをかけるように、母親がいない不安からか、子どもたちはわがままし放題。
普段からやや甘やかし気味の私の言うことにはあまり耳を傾けてくれず、その要求がさらにエスカレートしているようでした。
なぜここまで不安定になるのかを考えたとき、思い至ったのは「ストローク(心の栄養)が足りていないのでは?」ということです。
心理学で言うストロークとは、相手の存在を承認する行為全般を指します。
子どもにとっては「かまってもらえる」「ちゃんと見てもらえる」という安心感が心の栄養。
これが不足すると、行き場のない不安や寂しさがわがままや問題行動として表面化してしまうのです。
今回の記事では、このストロークの基本や親としてできること、大人自身にも必要な「心の栄養」について深掘りしていきます。
ストロークとは何か
ストロークの定義
ストロークは、交流分析(Transactional Analysis)という心理学の理論で使われる概念で、「他者から受けるあらゆる承認や関わり」を意味します。
簡単に言えば、「挨拶を交わす」「声をかける」「目を合わせる」「スキンシップをする」「褒める・ねぎらう」など、相手が「自分の存在を認められている」と感じる行為全般がストロークです。
ポジティブとネガティブ
ストロークには大きく分けてポジティブとネガティブがあります。
- ポジティブストローク
- 頭を撫でる、笑顔を向ける、褒める、感謝を伝えるなど、相手を肯定し、喜びや安心感をもたらす行為
- ネガティブストローク
- 叱責・非難・無視など、相手にとって不快なコミュニケーション。人は完全な無関心よりはネガティブでも関わりがある方を求める一面が存在します
子どもの健全な成長には、やはりポジティブなストロークが不可欠です。
心が満たされる仕組み
人間は社会的動物であり、「自分は存在していていいんだ」「受け入れられているんだ」という認識(自己肯定感)が生きるうえで重要とされます。
この自己肯定感を育てるのがストロークというわけです。
特に子どもはまだ心が未熟なので、親や身近な大人からのストロークを通じて「自分は大切にされている」と感じることが何より大切なのです。
ストローク不足が生むわがまま
「相手してほしい!」のサイン
母親不在で父親も忙しそう……そんなとき子どもは「もっとこっちを見て」「自分の存在を認めて」という気持ちを抱きやすくなります。
ところが、ポジティブストローク(優しい声かけ・スキンシップ)が足りないと、不安や寂しさが募り、わがままや問題行動として現れることがあります。
これはネガティブストロークであっても「注目を引きたい」という子どもの無意識的な行動パターンです。
どうしてエスカレートするのか
- ストローク不足(心の栄養不足)
- 子ども「わざと騒ぐ・わがままを言う」
- 親が叱る → ネガティブストローク獲得
- 一時的に「構ってもらえた」と安心
このプロセスを繰り返すことで、わがままや問題行動のエスカレートが続いてしまうのです。
ポジティブストロークが得られないなら、ネガティブでもよいから親を振り向かせたい——これが子どもの本音なのかもしれません。
親ができる具体的アクション:ストロークの与え方
意識的にポジティブストロークを増やす
- 毎日1回以上、子どもを抱きしめる・頬にキスするなど身体的なスキンシップ
- 「えらいね」「助かったよ」「ありがとう」などの肯定的言葉がけを積極的に使う
1日5分の“全力かまうタイム”を作る
- 忙しくても5分なら確保できるはず。その間はスマホも仕事もオフにして、子どもに100%の注意を向ける
- 絵を描いたり、ちょっとした会話をするだけでも「ちゃんと向き合ってくれている」と子どもは感じます
「興味を示す質問」を意識
- 「今日はどんなことがあった?」「そのゲームどうやるの?」と話を掘り下げ、肯定的に反応する
- 説教や評価ではなく、「あなたに興味があるよ」と伝えるのがポイント
ネガティブな要求に対してはまず肯定+落ち着いて説明
- わがままをただ叱るのではなく、「そう思うんだね」「気持ちはわかるよ」と受け止め、条件や代替案を提案
- ダメ!の一辺倒よりも、「こうしたらどう?」とポジティブな方法を探る姿勢が大切です
親自身のストローク不足にも要注意:大人こそ心の栄養を
大人も実は疲れている
仕事や家事育児に追われる中で、親もまたストロークを欲しています。
誰とも話せず孤独を感じていると、子どもへの対応にも余裕がなくなり、イライラしがち。
大人同士のストローク
夫婦間で「ありがとう」「助かるよ」といった言葉を掛け合うだけでも、親の心が安定し、子どもへの接し方も変わります。
地域や友人とのつながり
習いごとのコミュニティや友人とのランチ、SNSでの情報交換など、人と交流する機会を意識的に作るのも有効です。
自分を大切に扱うことで「子どもに優しくなれる」好循環が生まれます。
まとめ:ストロークを意識して、家族の笑顔を増やそう
⭐️ 子どもがわがままになる背景には心の栄養不足(ストローク不足)がある。
⭐️ ストロークとは、相手の存在を承認する行為(ポジティブ・ネガティブ両方あるが、子どもにはポジティブが重要)。
⭐️ わがままや問題行動は「ネガティブでもいいから関わってほしい」というサイン。
⭐️ 親ができる対策としては、短い時間でも丁寧に接する、スキンシップや声かけを増やす、興味を持って話を聞くなど。
⭐️ 親自身もストローク不足にならないよう、大人同士や地域コミュニティで支え合い、自己をケアすることが大切。
子どものわがままをただ「困った行動」として見るのではなく、「もっと自分を見てほしい」「受け止めてほしい」という心の叫びとして捉えられると、親としても少し見え方が変わります。
ストロークは大げさなことではなく、ちょっとした声かけやスキンシップ、笑顔で目を合わせるなど、ごく小さな行動から始められるもの。
わずかなストロークが子どもや家族の安心感を高め、結果として家全体の雰囲気がぐっと明るくなるはずです。
子育てに正解はありませんが、ひとつのヒントとして「ストローク」を意識してみてはいかがでしょうか。
何気ないコミュニケーションの中に、思いのほか大きなパワーが眠っているかもしれません。
それでは、今日も1日、最高に楽しく生きましょう!